【ネタバレ感想】すぐ泣く女に機関銃・彼との結婚だけが目標だった彼女の結末

2024-04-23

『すぐ泣く女に機関銃』は和田依子さん作の漫画で、同棲中の彼と結婚を望む「すぐ泣く女」こと本村杏が主人公のお話。
ソルマーレ編集部の「恋するソワレ+」レーベルで連載されていた、完結済み作品です。
コミックシーモアをはじめ、各種配信サイトで読めるほか、単行本も発売されています。

可愛くてキレイ路線の絵柄なんですけど、ドロドロした心情の描写とのメリハリが聞いていて、引き込まれました。
全6話の単行本1冊分でお話がまとまっているのも、読みやすくて良かったです。

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『すぐ泣く女に機関銃』のあらすじ

36歳の本村杏は大好きな彼氏と長らく同棲中。
いい加減結婚したいけど、そーゆーのは男のほうから言ってほしい、察してちゃんです。

同級生の友人たちはそれぞれ結婚したり子どもができたりしていて、たまに集まれば旦那の愚痴合戦
「私だったら、大好きな旦那さんを貶めること言わないのになー…」なんて、杏は考えてます。

で、結婚したら専業主婦希望なので、仕事も腰掛けでやってる風?
かつ、本人は職場で貧乏くじ引かされてると感じていて「面倒な仕事も引き受けてるのに、私って報われないなー」って思っています。
しかも、面倒見てあげている新人ちゃんは、いつも1人でお昼食べてるから、隣に居て話しかけてあげてるのに、ちっとも会話が弾みません。

こんな職場は早く離れたいから、プロポーズしてほしいのに、彼氏は趣味にお金を使っちゃうので結婚資金が貯まる気配もなく……

そんな杏に、いろいろなところから機関銃のような展開が降りかかります!

『すぐ泣く女に機関銃』の見どころ

多分、最初のほうは杏の察してちゃんなところや、でも・でも・だってな態度それとなく周りを見下している言動イライラ・モヤモヤさせられます。
そんな杏に対して機関銃のごとく突きつけられるさまざまな展開は、胸がスカッとする、いわゆる胸スカ要素を持っており、楽しく読み進められる構成です。
そして、ラストはどんでん返しというか、大切なことに気づいた杏は遅まきながら内面の成長を見せ、前に進んでいく、希望を感じられる終わり方なのがとっても良かったです!

第1話・すぐ泣く女

仕事はつまらないし、同僚や上司は悪い人じゃないけど、バカみたいなことばっかしてると、不満タラタラな杏。
そんな彼女の心の支えは、同棲中の彼氏・哲の存在です。
しかし、結婚に向けた話は全然出てこないし、哲は杏が楽しみにしていた旅行の約束を反故にして、趣味にお金を使う始末。
そんなんじゃ、いつまでたっても結婚できないよと、杏は涙するわけですが……

……いやさ、いい歳なんだし、自分から動いて状況を変える努力をしようよ?
と、杏の態度にイラッとさせられる1話目です。

そして、職場に行くと同僚の結婚話を耳にして、あの子が結婚できるのにどうして私はできないのかと、さらに不満をため込み……
同僚が結婚する相手のスペックを知って「なんだ、その程度の相手か」と安堵する始末。
発言の端々から見える杏の嫌な部分を、指導している新人・小津から指摘され、シクシク泣き出す杏

……いや、それちょっと、精神年齢が幼すぎやしませんか?

第2話・つまらない女

1話のラスト、新人の小津から「あなたはつまらない人間」という旨の指摘をされる杏。
2話のタイトルはその発言を引き継ぐような形です。

仕事中に泣く杏に対して上司は当たり障りなく接するのですが、杏はそれも不満に感じます。
「なんで、泣いてる理由を聞いてくれないの?」と。
「聞いてくれたら、小津さんが酷いこと言ったって伝えられるのに!」と。
同僚たちも特に杏を気にかけるでもなく、普通に仕事したり雑談したり……そんな様子にも苛立ちを感じ、杏は自分を振り返ることをしません。

なんというか……傍若無人に振る舞ってるわけじゃないけど、杏ってワガママなんですよね。
「自分が」「自分が」な気質で、周りを理解したり歩み寄ろうとしたりしない……

一方、在宅ワーク中の哲も一応今後のことを考えている風なのですが……
回想に出てくる女上司の存在に不穏な要素が見え隠れします。
口うるさくて嫌だと思っていたけれど、きちんと評価して、良いところを誉める人と知り、なんだか杏と比較している? 女上司に心惹かれている……?
そして、外食に出た先で、哲は「おまえって、人のことを誉めないよな」と杏に指摘します。

第3話・いいわけ女

哲から「人のことを誉めない」と言われショックを受ける杏。
何だかそよそしくなったようにも感じますが、もうすぐ哲が楽しみにしているレースなので、それで上の空なのかなと解釈します。

そして、杏がやった仕事でミスを指摘されますが、「でも~」「だって~」と言い訳ばかり……。
そんな様子に上司もうんざりしているようですが、杏は自分をあらためることをしません。
それどころか、自分を労ってくれない上司に心の中で悪態をつく始末……。

なんか、責任感ない態度で、見ていていらつくんですよね……。

で、哲がレース観戦する日だからと、杏は午後休を取って準備を整えます!
しかし、肝心の哲はレースの予定を忘れるほど仕事に打ち込んでいて……
その様子に不安を感じた杏は週明け、上の空で仕事をした結果、小津に頼んでいた仕事のミスを見落とす結果に!

小津とともに頭を下げる杏でしたが、ここでも「自分は悪くない」「小津さんが間違えたからだ」「あなたが私をいらつかせるからこうなったんだ」と、責任転嫁する言い訳を並べてしまいます。

第4話・何もない女

4話目は少し、杏の過去が語られます。
今まで、一生懸命になれるものが見つからなかった杏は「何もない自分」にコンプレックスを抱えていたようでした。
だけど、可愛らしい容姿をしていることから、恋愛面では自分が有利なことも多くて、それが杏にとっての大切なものとなっていました。

だけど今の恋愛はというと……
哲とは何だか溝ができてしまっていて、結婚できるのか不安を感じることばかり。
いろいろと耐えきれなくなった杏は、哲に「結婚しようよ」と迫ります!

自分から行動を起こせたのはよいものの、哲は及び腰な反応を見せ「ちゃんと考えるから」としか返しません。
「考えてくれてるんだ」と杏は安心しますが……哲の思いは杏とは違うような雰囲気です。

しかし、哲の真意に気付いていない杏は浮かれた気分で出社し、昼休みにフラフラと哲の会社へ。
そこで目にしたのは、直面したのは、哲の裏切りでした……。
そして、帰宅した杏は仕事に戻るという哲に、ワインボトルを振りかざします!

第5話・みじめな女

お昼休みに突然いなくなったため、杏の職場ではちょっとした騒ぎになっていました。
杏が教育を担当していた小津はかつて「つまらない人間」と言ったことやミスしてしまったことを気にしていたのもあり、杏の家へ行くと名乗り出ます。

雨が降るなか、公園のベンチに腰掛ける杏を見つけた小津は声をかけますが、その手には割れたワインボトル。
うつろな表情の杏から告白を受け、思いつめている様子から後追い自殺でもするのではと小津は心配します。
杏はそんなふうには考えていなかったようですが、自分を心配する小津に気付いて正気を取り戻すのでした。
そしてようやく大切なことに気付き、放置してきた哲のいる自宅へ小津と一緒に向かいます!

哲の安否が気遣われる不穏な展開なんですが、小津と杏の和解というか、杏が大切なことに気づいていく様子すごくグッとくるんですよ!

雨の中、走った小津と杏でしたが、哲は大したことになっていなくて拍子抜け。
事情を説明したのち、哲は「杏に付いていてほしい」と小津に伝えて出て行きます。

第6話・幸せな女

ずぶ濡れになり、着替えがない小津はひとまず杏の家に泊まることとなり、杏は小津に自分のことを打ち明けます。
得意なこと・好きなことがなくて、つまらない子でいたくなくて……
母は「好きな人のお嫁さんになるのが女の子の幸せ」と言っていたし、それを叶えたかったのに哲とは別れてしまったから、やっぱり自分はダメなのかと。

それに対して小津は、自分からすれば恋愛できる人はすごいし羨ましいと打ち明けられ、翌朝別れ際に「つまらないといったことを取消す」と言われます。
哲のいない部屋で家事をして週末を過ごし、これからどうしようかと考える杏。

試しに同僚がハマっているというアーティストの曲を聴いてみたら、思っていたのとは違う雰囲気で良いなと感じ、出社してから同僚に伝えます。
すると、同志を見つけたファンとして推し愛のマシンガントークを聞かされ、杏はこの人はものすごくこのアーティストが好きなんだと感じ、レースが大好きな哲のことを思い出します。

そうして杏は同僚たちとも歩み寄れるようになり、前に進むのでした。

すぐ泣く女・杏の問題点

ここからは杏の問題点。
いくつか挙げられますけれど……

  • 36歳にしては精神面が幼い
  • 恋愛(恋人)に依存する傾向
  • 専業主婦志望にしてはスキルが心配

36歳にしては精神面が幼い

まず、思い通りにならないことがあれば、ふえぇ~んと泣いてしまう、幼さがあります。
まぁ、それでも愛らしい容姿だし、36歳にしては若く見える雰囲気なので許してくれる人は多いでしょう。
でも、それが許されることだと思って、改善しないままでいるのは良くないんだよなぁ……

加えて他責思考、仕事への責任感のなさ、「私は頑張ってやってあげてる」という思い込みなどなど……大学卒業後に就職したとして、10年以上働いているにしては内面の未熟さを感じる人物像です。

恋愛(恋人)に依存する傾向

そして、自分には得意なこと・一生懸命になれることがない杏は、恋人に依存しているといえます。
大切な人に喜んでもらえるようにっていう、その考えはとても良いことだし、哲が大好きなレース観戦を楽しめるようにと準備を頑張る姿もありました。
それは良いんですけど……精神面の幼さが組み合わさると、ちょっと重たいタイプになりますよね……。

尽くしてくれるのは嬉しいけれど、結婚したら完全に寄っかかられるんじゃないかと……そんな不安を感じさせるタイプじゃないでしょうか?
哲が杏との結婚を具体的に考えられないまま、でも居心地良くてズルズル同棲を続けちゃったのは、こういう部分なのかなと感じました。

専業主婦志望にしてはスキルが心配

また、杏は結婚願望アリアリなうえ、結婚したら専業主婦志望でしたね。
別に、夫婦間で納得しているなら専業主婦志望でも問題ないわけですが、そもそも論として結婚の話すら出ていないのに、それが当然叶うと思ってる状態もどうなのかなーと。

哲と住んでいたマンションはキレイに整えられていましたし、終盤、杏が掃除や洗濯をしているシーンもあったので、家事ができないわけではないのでしょう。
ただ、料理は毎日しているようではなくて、デパ地下で買ってきたりとか外食したりとかも結構ある感じ?
結婚して専業主婦を目指すなら、家事スキルのアピールも必要だと思うんですけど……そういう雰囲気はなさそうでしたよね……。

あと、金銭感覚についても……
哲も哲で趣味にバンバンお金使っちゃう様子は問題ですが、専業主婦になって家計を預かるつもりなら、そのあたりもしっかりしないと生活が破たんすると思います。
同棲中はそれぞれ仕事してお金を稼いできたから、旅行だのエステだの新しいバッグだの好きにお金を使えましたけど、杏が専業主婦になるのなら収入面も変化します。
その辺の見通しも甘かったんじゃないかなぁと思いますね。

彼氏の哲もダメ男じゃないか?

杏の問題点を挙げましたが、杏が大切に思っていた哲も、いろいろダメなところがあったと思います。

  • ダラダラと8年も同棲
  • 俺が稼いだ金なんだから発言
  • 別れる前から好きな人へアプローチ

ダラダラと8年も同棲

とりあえず、曖昧な態度で8年も同棲続けるのは……いろいろダメでしょ?
杏からの結婚したい圧をそれとなく感じていて、でも応える気持ちになれないなら、ちゃんと向き合うべきなのに。
そもそも結婚願望がないのか、あるけれど考えている時期の問題か、それとも結婚相手としては考えられないならそれを打ち明けて価値観のすり合わせを試みるとか……

もちろん、哲もダラダラ付き合ってしまった自分の責任を自覚しているので、修羅場になっても杏を責めず、穏やかな結末へと向かったわけですが……

俺が稼いだ金なんだから発言

約束していた旅行を反故にして杏から責められたとき「俺が稼いだ金なんだから、何に使ってもいいだろ!」って発言しましたよね?
これ、もしも結婚して杏が専業主婦になったなら、モラハラとか経済DVに発展しかねない、危険な言葉だと思うんですけど、どうでしょう?

別れる前から好きな人へアプローチ

交際する中で発生する心変わりは仕方がないものだと思います。
でも、順序というか、筋は通すべきでしょう?

ソリが合わないと感じていた女上司の本心を知って、尊敬から好意を持ちやがて……と、気持ちの変化自体は仕方がないとしても、杏との関係を精算する前の手つなぎ行為はいかがなものか?
傍目には、付き合ってるんじゃないかと受け取られますよね?
相手の女上司も、どーゆーつもりで手つなぎを受け入れてるのよ?
長らく同棲している彼女がいるという部下から、仕事中に手を繋がれたら……拒否するのが普通では?

展開上、哲の裏切りを見せるためにああいう画だったのかなとは思いますけど、哲にも女上司にもモヤッとさせられますね!

『すぐ泣く女に機関銃』はコミックシーモアをはじめ各種配信サイトで読めます!

『すぐ泣く女に機関銃』はコミックシーモアをはじめ、各種配信サイトで読めます。
完結済みで全6話と、サクッと読める長さなので、ぜひ読んでみてください。
コミックシーモア読み放題にも対応していますし、ピッコマなら途中まで無料で読めますよ。

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