文学フリマのカテゴリー塗り分けマップができるまで

2024年は文学フリマ京都8を皮切りに、1年間各地で開催される文学フリマのカテゴリー塗り分けをしてきました。
2025年も文学フリマ京都9・文学フリマ広島7と、塗り分け作業を継続しており、文学フリマに出店される一部の方からはカテゴリー塗り分けをしている奇異な存在として認識されるようになったと感じています。

そして、2025年のもじのイチ#2に参加した際、打ち上げの席で「あの塗り分けマップはどのようにして作っているのか?」という質問をいただきました。
(酔っていたのでうろ覚えなんだけど……)

……ということで、読酌文庫が塗り分けマップを作る過程をここに記します。

前提としての作業環境

ほどほどスペックのパソコンで作業
使用ソフトはPDFの展開・書き出しができるクリップスタジオペイントのEX版
(株主優待ありがとう!)
レイヤー分け・フォルダー分けしてカテゴリーごとに色を変えている

基本的に、開催30日前に配置とWebカタログが公開されてから、ヨーイ ドンで作業スタートです。
まぁ、公開されないことには、何もできないですからw

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もくじ

1.配置図を開いて、マップの土台を整えます

いきなり色を塗っているわけではなく、まずは土台を整える作業をしています。
色々やっていくうちにね……最初に土台を調整してから作業を進めたほうが良いなと感じるようになったんですよ。

配置図のPDFをダウンロードしてクリップスタジオペイントで開きます

クリップスタジオペイントはEX版だとPDFデータの読み込み・書き出しができるんですよね。

そんなわけで、まずは配置図のPDFをダウンロードしてクリップスタジオペイントで読み込み、クリップスタジオペイントのファイル形式で保存します。

クリップスタジオペイントでPDFファイルを展開するところ

塗り分けたデータをPDF化して配布することを考えて、入力解像度は300だか350だかを選択。
この配置図をベースにカテゴリーごとの塗り分けをしていくのですが……規模によっては根気のいる作業です。

配置図をモノクロ化します

クリップスタジオペイントで展開したばかりの文学フリマ配置図(カラー)

最近は配置図がカラーなんですよね。
でも、今からカテゴリーを見分けるための色分けをするので、配置図に色が入っていると邪魔です!
よって、土台となるマップ部分はグレースケールに変更して、濃度もいじります。

レイヤープロパティで、カラーやモノクロを簡単に切り替えられるのがありがたい!
でも、フロア部分のグレーが濃いめな印象だし、塗り分けマップとしては不要な情報の文字も載っています。
必要な部分だけメリハリを付けたいので、白く塗りつぶして不透明度を調整したレイヤーを重ねます。

文学フリマの会場配置図をグレースケールにし、濃度を変えるため白塗りレイヤーを重ねたところ

「文学フリマ広島7 会場配置図」と開催日・会場についての情報ははっきり濃い文字にしておきたいので、この部分な塗りつぶしを消すことにします。

会場配置図のタイトル部分の文字はハッキリさせたいので、白塗りを部分削除したところ

範囲選択して「Delete」すると、すぐですね。

邪魔ものは消し去ります

出店カテゴリーの文字も載せるので、余計な文字情報があると邪魔かもしれません。
スポイトで色を拾って塗りつぶし、宅配コーナーや試し読みコーナーの文字は消すことにしました。

会場配置図から余計な文字情報を消したところ

今回の文学フリマ広島7で使われる会場はシンプルな構造ですが、会場によっては、フロア内に柱とか間仕切りとかがあることも……。
そういうときも、構造物を消し去っています。
(実際の建築物は柱も間仕切りも大事なので、勝手に消し飛ばさないでください)

島情報(配置を示す文字)は増殖します

カテゴリーを書き加えたとき、どこに文字が重なるか分かりません。
「○○カテゴリーの位置は分かったけれど、どの島?」という状態を防ぎたい。
なので、アルファベットや五十音で示される配置の文字は複写して、増やしておきます。

島配置のアルファベットを増やしたところ

多すぎるくらいで案外ちょうどよいこともあります。

注釈文字を入れます

読酌文庫が勝手に作っていること、転載やら加工やらは好きにしちゃってくださいなことを、適当な位置に追記します。

注釈を書き込んだところ

いちいち使用許可の問い合わせをいただくのも心苦しいですし(報告いただくのは構わないですが、お手間かなと思うので)、読酌文庫が勝手に作っているもので、公式ではないというのははっきりさせて置いたほうが良いなと思ったので。

土台が整ったらフォルダにまとめてロックしておきます

レイヤーをフォルダにまとめる

配置図の土台となるレイヤーをフォルダーにまとめ、フォルダーごとロックしておきます。
今後の編集時、誤って触ってしまうと面倒なこともあるのでね。

2.Webカタログを見ながら分布をチェックします

さて、いよいよ塗り分け作業本番!
Webカタログでカテゴリーごとに絞り込み表示して、塗り分けを進めます。

パソコンの画面でクリップスタジオペイントとWebカタログの表示を切り替えながらやるのは非効率なので、Webカタログは手元のスマートフォンで開いて、モニターと見比べています。

また、カテゴリーごとにフォルダーとレイヤーを分けていきます。

階層構造のイメージ(実際のフォルダー・レイヤー順序は異なる場合があります)

詩歌フォルダー
└現代詩・散文詩レイヤー
└俳句・短歌・川柳レイヤー
└…
ノンフィクションフォルダー
└エッセイ・随筆・体験記レイヤー
└ルポ・ドキュメンタリーレイヤー
└…
評論・研究フォルダー
└文芸批評レイヤー
└文化研究レイヤー
└現代思想・哲学レイヤー
└…
小説フォルダー
└純文学レイヤー
└エンタメ・大衆小説レイヤー
└SFレイヤー
└…
配置図フォルダー(ロック)

カテゴリーごとの配置をチェックします

カテゴリーごとに塗り分けるといっても、最初からベタベタ色を付けるわけではありません。
まずは、どのカテゴリーがどこからどこまでかわかるよう、チェックを入れます。

カテゴリーをチェックしているところ

Webカタログをスマートフォンで見つつ、カテゴリー別にレイヤーを作って、配置番号にチェック。

プルダウンでカテゴリーを選んで絞り込み検索し……
「このカテゴリーは<あ-1>~<あ-6>、ちょっと飛んで<あ-10>~<い-6>まで」
……とか、そんな感じで。

この段階では簡単に、てん、てん、と配置番号にペンで印を付けたり、続いているところはダーッと直線でチェックしたりするだけです。

カテゴリーをチェックしているところ

そのカテゴリーの出店者が1組だけであっても、レイヤーは分けます。
複数のカテゴリーを1つのレイヤーで表現すると、作業中分かりにくくなっちゃうし……

大分類でフォルダー分けしたところ

また、小説/評論・研究/ノンフィクション/詩歌の大分類でフォルダー分けもしておきます。

全カテゴリーをチェックしたら空白スペースを確認します

すべてのカテゴリーをチェックしたぞ!
……と思ったら、なんだか抜けているところがあります。

カテゴリーをチェックしたけれど…?抜けがある???

ところどころ空いている部分は、調整用の予備スペースかもしれませんが、H-37~H-44は明らかにチェック漏れっぽい……?
どうなんだ???
Webカタログでその位置に入るはずのカテゴリーを調べます!

Webカタログのスクリーンショット

むむむっ!!!

カテゴリーで検索していたのを解除し、ナンバー順にWebカタログを確認したところ、H-36のあとはI-01~02のブースが来ます。
文学フリマ広島7では、H-37~H-44を予備スペースにしているようでした。
(宅配搬出の受付場所近くですし?)

同じようにして、ところどころ隙間ができている部分も、チェック漏れなのかそうでないかを確認します。

予備スペースは黒く塗りつぶします

確認の結果、予備スペースのため欠番となっている配置番号のところは、欠番用のレイヤーを作って黒く塗りつぶします。

欠番ブースを塗りつぶしたところ

欠番レイヤーも土台となる配置図のフォルダーに入れてグループとしておきます。

3.大分類の色を塗ります

さぁ、いよいよ色を乗せる作業です! モノクロの配置図がカラフルになっていきますよ。

とはいえ、基本的に塗りに使う色は切り替えず黒で塗りつぶし、レイヤーごとに表示カラーを変えることで色分けしています。

そして、いきなり詳細カテゴリーをちまちま塗り分けるのではなく、先に大分類の塗り分けをします。

色を塗るカテゴリー(大分類)だけ表示して色を塗ります

カテゴリーごとにレイヤー分けできたので、カテゴリーの大分類でまずは塗り分けです。

小説/評論・研究/ノンフィクション/詩歌でフォルダー分けしているので、フォルダー単位で表示・非表示を切り替えて、新しいレイヤー(乗算)に大分類の色を塗ります。
色はレイヤーカラーを変えて表示します。

大分類の色を塗り分ける

同様に、フォルダー単位で表示を切り替えながら、それぞれ新しいレイヤーに色を塗ります。

大分類の色を塗り分けたところ

これで、大分類での配置状況がわかりやすくなりました!

文字を入れて大分類のフォルダーにまとめます

どの色で塗った範囲が何のカテゴリーか分かるよう、文字で情報を入れ、大分類の塗り分けをフォルダーにまとめます。

大分類を塗り分けて文字を入れたところ

文字は読みやすくするため、レイヤープロパティの境界効果で白く縁取りをしています。

これで、大分類の塗り分けマップはできたも同然です。

これだけでもだいたい、何処に行けば目当ての作品に出会えるか、何となくわかると思いますが……
規模の大きい文学フリマだと、これだけでは情報が足りません!

そんなわけで、引き続き、詳細カテゴリーの塗り分けも頑張りましょう!

4.詳細カテゴリーを塗り分けます

ここから先が結構、めんどかったりします。(Webカタログで配置をチェックする工程も面倒ですが)

なんせ、詳細カテゴリーはいっぱいあるのでね。

特に小説と評論・研究がね……細かく分かれているんですよ、えぇ。
一方、ノンフィクションと詩歌はそこまで細分化されてないんだよなぁ……

だから、小説と評論・研究の詳細カテゴリーを塗り分けできたら、終わりが見えてきた感があります。

大分類で塗り分けたとき同様の手順で詳細カテゴリーを塗っていきます

Webカタログで配置をチェックしたときに、カテゴリーごとに作ったレイヤーに塗っていきます。
ここでも、カラーはレイヤーの表示色を変えることで分けています。

詳細カテゴリーの塗り分けをスタート

このとき、大分類の塗り分けをやったときに使ったレイヤーをコピーして「下のレイヤーでクリッピング」するための「下のレイヤー」として使います。
そうすることで、大胆にはみ出して色を塗っても、大分類で塗り分けたときの範囲内に色を収められて、整えるのが楽なんです。

クリッピング機能を使って大胆に色を塗っていく

「下のレイヤーでクリッピング」していると、大雑把に範囲選択→塗りつぶししても、下のレイヤーで色が乗っている範囲外には色が付かない。
(レイヤー上には色が付いてるんですけど、表示されなくなる)

レイヤーを切り替え、表示色を変え、塗り分け作業を続ける

適宜レイヤー順序を入れ替えて出店数の多いカテゴリーから塗っていき、隣り合うカテゴリーがなるべく似た色にならないよう配慮します。

詳細の塗り分けができたらクリッピング用のレイヤーを白くします

フォルダー内の詳細カテゴリーを塗り分けたら、はみ出し具合を整えます。

詳細カテゴリーの塗り分けができたところ

大分類で塗り分けたときの色が残っているのも見栄えが悪いため、クリッピング用にしていたレイヤーの表示カラーを白にします。

クリッピングに使っていたレイヤーをしろ表示にして見えなくする

何となくスッキリしたんじゃないでしょうか?

詳細カテゴリーの文字を入れます

大分類のときと同じ要領で、詳細カテゴリーの文字を入れて、どこがどのカテゴリーかわかるようにします。

文字を入れる際、カテゴリーごとに出店者の多い・少ないがあるため、バランスを考えながら配置します。
場合によってはスペース外に表記したり……

詳細カテゴリーの文字入れ

文字と注釈を指し示す線のレイヤーには、レイヤープロパティで境界効果の縁取りを入れています。

同様の作業を、大分類ごとにやっていきます。

マップにタイトルを入れます

詳細カテゴリーごとの塗り分けができたら、それぞれにタイトルを入れます。

マップにタイトルを入れる

これで、塗り分け作業は完了です!

5.配布できるデータ形式に保存します

クリップスタジオペイントのファイル形式では配布に適さないので、PNGとかJPGとか、配布に適した画像データとして保存します。

  • 大分類
  • 小説カテゴリー
  • 評論・研究カテゴリー
  • ノンフィクションカテゴリー
  • 詩歌カテゴリー

以上5つの画像データを作るため、「画像を統合して書き出し」をします。

画像を統合して書き出し

最初に配置図のPDFを展開するとき、印刷を想定した解像度にしていたため、配布用の統合した画像データは50%くらいに縮小しています。

出力する画像データは50%圧縮

また、印刷向けのPDFファイルも用意したいので、「複数ページ書き出し」にある「.pdf(PDFフォーマット)…」で、PDF版も保存します。

画像データで各マップを保存したら、SNSに投稿して共有します!
みなさん、どんどん拡散してくださいね!

6.SNSやBOOTHで共有します

画像ファイルとPDFファイルで塗り分けマップができたので、SNSに投稿して共有したり、自家通販で使っているBOOTHにて無料配布したり……
とにかく共有します!

今回の例に挙げた文学フリマ広島7は出店ブース数300程度と、文学フリマの中では中小規模の部類ですが、それでも手間はかかっています。

その手間が報われるには、なるべく多くの人の目に留まるようにして、文学フリマを楽しむ際に役立ててもらうしかありません。

自分ひとりで楽しむだけだとね……あんまりやった甲斐がないなって思うんです。
それこそ、自分だけが使う用なら、気になる・興味の強いカテゴリーのエリアだけ色を付ければ良いわけですし。

でも、折角やるなら、積極的に見に行くことの少ないカテゴリーも塗り分けて、他者のニーズにも応えられたら……
ちょっとは善人ムーブできるかなという、打算もあります。

塗り分け作業の大変なところ

面倒な作業だなーと思いつつも、基本的には楽しんでやっています。
コツコツ作業を積み上げるのは好きですし、蓄積したデータを見返して検証するのも好きなんですね。

でも、当然ながら、やっていて大変なところもあります。

色の選択が難しい

基本的に、隣近所と同じ色にならなければ良いんですけど、視認性を考えると……これで良いのか不安な要素です。

そもそも、色覚自体、個人差があります。
だから、私がセレクトしている色も、人によっては大変見づらいのではないかと……

十分な配慮ができておらず、心苦しいところです。
しかしながら、一個人ができることは限られるので、ご容赦いただけると幸いです。

文字の配置バランスも難しい

カテゴリー名を示す文字の配置もどこに置けば良いのか悩ましい問題です。
細々と、細分化されたカテゴリーがひしめき合うところは特にね……上手いやり方を考えないとなー……

規模が大きくなるほど作業が大変&フロアが分かれると正直辛い

広島の次は東京が来ちゃう―――

しかも、次の東京開催で使われる場所って、ビッグサイトの南1~4でしょう?

1階と4階にフロアが分かれるじゃないですかー!
どっちにどのカテゴリーが配置されるのか、試し読みコーナーはフロアごとに作るのか1箇所にまとめるのか……

前回の文学フリマ東京39はワンフロアにまとまって、いくらか作業が楽だったんだよなぁ……
はぁ……作業の手間を考えると、今から頭痛がしてきて、頭の痛い頭痛がします。

まぁ、でも、TRCで3フロアに分かれていたときよりはマシ?

まだまだ必要な人に届ききっていないかもしれない?

出来上がったマップをSNSに投稿すると、規模に比例して拡散して貰えるんですけれど……
多分、参加する人全員には行き届いてないと思われます。

私の苦労が報われるには、より多くの人に見てもらわないといけないんです。
(そして、読酌文庫が出店するときは買い物に来てください!)

あなたの拡散が必要です! フォロワー数は関係ありません!
いいな、便利だな、と思っていただけたら、ぜひ広めてください!!!
あと、読酌文庫が出店しているときは、ブースを見に来て下さい!

読酌文庫の次回文学フリマ出店は9月の大阪です

東京にリベンジする機会を伺っている読酌文庫ですが、実現するのは多分、来年以降じゃないかな?
そんなわけで、5月に開催となる文学フリマ東京40へ出店される皆さま、ご健闘をお祈りいたします。

読酌文庫の次回文学フリマ出店は、2025年9月14日開催の文学フリマ大阪13です。
先着枠に入れたので、入金が済み次第、出店確定。
しかも今回、「小説|エンタメ・大衆小説」ではなく「小説|恋愛」カテゴリーに鞍替えしての挑戦です!

頒布物のラインナップも恋愛要素のある作品に絞り込み、机上ディスプレイも刷新予定
読酌文庫の新たな一面を展開できればと思います。

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