はなり亭で会いましょうを完結させて思ったこと

2019年夏に読み切り短編で書いた後、2020年の文学フリマ京都合わせで1冊の本にし、図に乗ってシリーズ展開させてきた『はなり亭で会いましょう』が、2023年9月の文学フリマ大阪合わせで完結しました。

昨年、3巻を出した時点で「次でラストかな」と考えていたので、予定通りに進められてよかったです。

そんな全4巻の小説を書いてみての振り返りを綴ります。

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『はなり亭で会いましょう』を4巻で完結させたワケ

「いくらでも話を続けられそうな雰囲気じゃない?」って言われたこともあるんですけど、以下の理由から「区切りの良いところで終わらせないと」と思ってたんですよ。

長く書き続けるのもいいけど、一旦終了して、ほかの作品も書きたいと思ったし。

理由1:展開のマンネリ化

『はなり亭で会いましょう』の展開として、大体次の流れがパターンだと思うんです。

  1. 絢子(主人公)が職場で嫌な目にあう
  2. 気分転換にはなり亭へ行く
  3. 美味しい料理とお酒で癒やされる

別にそれが悪いワケではないけど、結局このくり返しだよなーって思ったんですよね。
もちろん、話が進むにつれて登場人物たちの交流が深まってきて、関係性の変化はあるんですけど……でも、基本的にはこの流れ。
あとは、もう一人の主人公・涼花サイドでのエピソードで、ちょっと雰囲気を変えつつ、絢子サイドのエピソードを補足する。

もちろん、展開の定番化もシリーズものだとよくあることで、それが全部悪いとも思わないんですけどね。

人気作品だと「毎回恒例の○○シーンはどこで入るのかしら?(ワクワク)」って思うこともありますし、「おー、今回はいつもお決まりの××展開をこの流れで出すのか!(良い意味での裏切り)」みたいなやり方もできる。

でも、それを自分が上手いことやれるかっていうと……

だからとりあえず、本編の展開はどこかで終わらせよう、幕を下ろそうと考えるようになったんです。

理由2:ネタ切れ

この世界観・登場人物で書きたいと思った展開を、ある程度書き尽くしたようにも思いました。

一応、考えてたけど出さなかったエピソードもいくつかあって……

  • はなり亭が大人数予約をドタキャンされる
  • はなり亭で大量注文した客がほとんど料理に手を付けずに帰る
  • 飲食系のイベントにはなり亭が出店する(絢子が何か手伝う)
  • 絢子がはなり亭で出会った異性に口説かれる(恋の予感!?)
  • 涼花がバレンタインに悩む
  • 彩華のパートナー(外国人)が登場する
  • 海堂が出世コースから外れる(ざまぁ展開)

それぞれ、大なり小なり盛り上がる要素はあると思うんだけど、何でもかんでも盛り込めば良いってもんじゃないし、「絶対書きたい」とか「展開に不可欠」って程でもなかったのでカットしました。

まぁ、なんか違う形でこういうエピソードを使うかもしれないんですが。

1巻・2巻を書いてたときは、そんなに気にしなかったんだけど、なんかだんだん良いのが思いつかなくなってきましてね……
でも、飲食シーンは作品の肝でもあるから、ある程度入れないとな~……っていうプレッシャー。

同じ料理ばっかり出てくるのも目新しさに欠けますしね?

そんなわけで、ネタ切れでこれ以上苦しまないためにも、話を終わらせる必要があるなと思ったんです。

理由3:在庫管理と出店時のレイアウト問題

巻数が増えていくと、それだけ場所を取るんですよね……いろんなシーンで。

全4巻のシリーズものを売り続けるとなれば、基本的に在庫は1巻から4巻まで揃えておく必要があります。
途中の巻が欠品したら、増刷して在庫補充しないといけない。

そして増刷時は何部刷るべきかという悩み……

在庫を置くスペースを考えて少数ずつチマチマ刷ると1冊あたりのコストが割高になるし、かといって大量に刷っても置き場に困る。
ベストな量・印刷費用の模索に頭を抱えます。

同じ4種類の本を在庫で持っている場合でも、それぞれ独立した作品×4種類なら、1種類が欠品しててもそんなに問題にならないですよね。
むしろ、売り切れたタイミングで終売宣言できるというか……その意味でも長く続くシリーズものって、悩ましいと思います。

また、イベント出店時も巻数が多い本はレイアウトに良いか悩むし、搬入量はどんな割合が適正かを考えなきゃいけないし……

そういう事情から、自分としては4巻ぐらいで終わらせてしまうのが賢明かなと思ったんです。

理由4:終わらせることの大切さ

書き始められるかどうかって、小説執筆時の最初の関門だと思います。

構想とかネタとかはあっても、いざ、お話を書こうとすると文章が出てこなくてってのは、よくある話。

でも、書き始めるのと同じくらいかそれ以上に、書き終えられるかも大事だと思うんです!

だから無理矢理にでも続けるんじゃなく、どこかで区切りを付けて書き切った状態に持って行きたかったので、4巻で終わりにしました。

書き始めると意外な方向に展開が転び……

1巻を書いたときから感じていたんですけど、書き始めると最初の構想とは違う方向に話が進んでしまうというか、違う展開を思いついてしまうというか……なんかね、登場人物たちが勝手に主張するんですよ(?)

1巻のラスト、構想段階では傷ついた絢子の心を救うのは御厨だったはずなんです。
なのに、気がついたらもう一人の主人公である涼花がそのポジションで……多分そのあたりから御厨が空気になっていったような?
(主要人物のはずなのに?w)

結末への悩み

4巻で終わらせようと思ったものの、じゃぁどんな終わり方だったら良いのか……すごく悩みました。

ある程度、作中で問題に挙がっていた事柄は解決させておかないとスッキリしないでしょうし……

張られた伏線の回収や作中に登場した謎への解答をあえてせず、読み手に考えさせる・余韻を与える読後感を作る小説もありますけど、どちらかというとそれは純文学向けの書き方かなって思うんですよね。

そして私は、文学フリマで「小説|エンタメ・大衆小説」カテゴリーを選んできたワケで、エンタメ作品ならば、伏線回収しっかり・結末の方向性はキチンと見せるがないと、「つまらない」という感想を持たれやすいんじゃないかと。

ならばやはり、フワッとした要素はなるべく残さないように……大事な部分はある程度ケジメを付ける終わり方が必要と考えました。

この方針は決まってたんですけど、じゃぁ、「A」に対する解答は「B」なのか「C」なのか、「い」の出来事は最後「ろ」になるのか「は」なのか……いっそ「X」なのかとか……

方向性示すにしても、ズバッとキッパリ断定する書き方か、多少ぼかしつつ今後を予想させる雰囲気にするか……

あぁでもない、こぅでもないと考え、決めて、決めた答えに対してまた疑問が浮かび……

全4巻を振り返っての反省

書き終えた直後はやりきった達成感でホクホクしてたんですけど……時間が経ってくるとアレコレ反省点もあるなーって。

4巻を出して、少し時間が経った今思う、反省点に関する事柄です。

誤字・脱字はなぜなくならないのか!

入稿前は毎回、一生懸命チェックするんですけどね……それでも後で見直すと見つかる誤字・脱字
場合によっては表現の誤用も出てくる……\(^o^)/

時間とお金の余裕があるなら第三者にチェックしてもらったほうが、よりクオリティを上げられるよなと思うのでありました。

で、最近は音声読み上げを使ったチェックも入れるようにしました。
目視だと見落としてたところも、読み上げ音声を聞くと気付ける場合があるのでね。

読み上げ精度はまだまだ完璧ではないけれど……それでもちょっとした送り仮名の間違いとか、助詞の使い間違いとかに気付けるのはありがたいです。

微妙な矛盾が見つかる……

1巻の設定ではこうだったのに、4巻の展開では違うことになってる?
読み切り短編で伏線として書かれてた内容が、本編ではちょっと違う内容になってる?

みたいなことが、よくよく振り返って検証すると出てきます\(^o^)/

シリーズが長くなるほど、こういう部分のチェックも必要だなーって感じました。

話の本筋に大きく影響するわけではないんだけど、気付いた人は「あれ?」って感じるんだろうな……と。
誤字・脱字もですが、こうしたちょっとした矛盾点って「文章の読み心地」に影響すると思うんです。

料理で喩えるなら、歯触りとか舌触りとか、喉ごしとか……なんか引っかかると、そのせいで美味しくなくなっちゃうやつ。
絶品料理に舌鼓を打っていたはずが、喉に小骨が刺さった途端悶絶して、「美味しい」は遙か彼方へ。
砂抜きが不十分だったせいで奥歯に「ジャリッ」って感じたら、なんかもう、その料理を味わっていられなくなります。

誤字・脱字、表現の誤用や些細な矛盾は、文章全体からするととっても小さな部分なんですけど、認識されるとメチャクチャ気になるし、残念な気分になってしまうし、作品に集中できなくなってしまう存在です。

だから本当……なくさないとな~、って思います。

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『はなり亭で会いましょう』全4巻+αはイベント・委託先・電子版などで発売中

自己弁護というか反省文というか……
『はなり亭で会いましょう』は完全無欠の最高傑作、とは言えないですけれど、読酌文庫にとって原点にして頂点なので(頂点は今後、塗り変わっていくかもだけど)今後も末永く頒布していきたいなと思っております。

※Kindle版は本編に加えて番外編作品を同時収録しております。また、諸般の事情により、紙で出している『はなり亭で会いましょう』より部分的な修正を加えておりますが、話の展開に影響はありません。

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