【推したいマンガ】すべてはエミを取り戻すために!悪役令嬢の中の人

2025-02-08

久しぶりに、マンガの紹介やら感想やらも書こう思いまして……
今すごくはまっていて推したいマンガ『悪役令嬢の中の人~断罪された転生者のため嘘つきヒロインに復讐いたします~』の紹介です!
(タイトル長いため、以下『悪役令嬢の中の人』と表記)

「小説家になろう」の投稿作品が書籍化され、それを原作とするコミカライズ作品がpixivコミックにて連載中です。
(原作・まきぶろ先生、キャラクターデザイン・紫 真依先生、マンガ・白梅ナズナ先生)

コミカライズ連載は話が大詰めを迎え、大変盛り上がっております!!!
あー、次の更新が待ちきれない!
でも、連載が終わるのは寂しい!!
心が2つある状態になってしまいそうです。

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ただの悪役令嬢ものにあらず!『悪役令嬢の中の人』の魅力

『悪役令嬢の中の人』は、異世界転生系で人気ジャンルのひとつである悪役令嬢もの(そして婚約破棄令嬢)ではあるのですが、ひと味違うところがいくつもあるから面白い!

「Renta!マンガ大賞2024」では、総合大賞に輝いたのも頷けます。

また、原作小説は未読なのですが、原作小説既読の方からは、コミカライズにあたって上手く行間を埋めていると評価があるようです。
原作小説の美味しさを活かしつつ、漫画家さんが上手く調理されたのでしょう。
作画の美しさだけでなく、マンガとしての面白さも見事な作品です。

「中の人」の入れ替わりから始まる物語

不慮の事故により、生前遊んでいたゲームとか読んでいた小説とかの登場人物に転生するのは、今や一つのジャンルとして確立された様式です。
しかし、その多くは転生先の人物本来の人格がどこに行ったか、言及されません。

『公爵夫人の50のお茶レシピ』は、公爵夫人・クロエに転生した主人公が幸せを掴むなかで、本来のクロエの行方を知る展開がありましたけど……元の人格の行方までは描かれないことが多いです。

『悪役令嬢の中の人』では、本来の悪役令嬢・レミリアは転生者・エミに体を奪われ、レミリアの中の人がエミという状態で共存します。
転生者・エミがレミリアとして生きる様子を悪役令嬢が見守ることになるのですが……レミリアとして生きるエミが陥れられ、意識を失った結果、本来のレミリアが目覚める。
そして、悪役令嬢・レミリアとして復讐を果たすべく、行動に移る。

それが、この作品の始まりです。

主人公の推しが悪役令嬢

悪役令嬢・レミリアに転生した現代人・エミが、生前どのキャラクターよりも推していたのはレミリアでした。

「悪役令嬢に転生しちゃったー! どうしようー! 頑張って悲劇を回避しなくっちゃ―!」

というのが異世界転生した悪役令嬢もののパターンですが、エミは推しに転生したわけです。
だから、一般的な悪役令嬢ものと比較して、ちょっと行動原理が違います。

幸せになって欲しい推しのレミリアは、作中でまったく報われない存在でした。

そんなわけでエミは、婚約破棄や断罪、身の破滅といった自身に降りかかる悲劇を回避するというより

「推しのレミリアたんに転生しちゃったー! どうしようー! 頑張ってレミリアたんを幸せな女の子にしなくっちゃー!」

という行動原理で動きます。

結果的にそれは自身の悲劇を回避することでもあるのですが、自分の身を守るというより、レミリアのためという点が他とはちょっと違うなと感じられます。

主人公の推しが悪役令嬢という状況は『私の推しは悪役令嬢。』でもやっていましたね。

悪役令嬢が一番愛しているのは転生者・エミ

婚約破棄された後、元婚約者以上のハイスペックな相手に見初められて……というのは、悪役令嬢ものに多いと思います。

『悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される』も、悪役令嬢・ティアラローズは王太子・ハルトナイトに婚約破棄されたあと、隣国の王太子・アクアスティードに求婚されます。
ハルトナイトはなんだかなー……って感じの言動があり、結局王太子を廃される一方、アクアスティードは自身の立場をわきまえつつ、正攻法でティアラローズにアプローチしてハートをゲット!
同じ王族でも格の違いを見せつけられる感じで、ザマァな展開も見られます。

『悪の華道を行きましょう』は、イケメンとはほど遠い年上の腹黒宰相に嫁がされる展開ですが、転生前の記憶が蘇ったセレスティーナはなんと枯れ専。
ぽっちゃりした宰相の姿も、はげ頭も、年が離れていることも何ら問題なく、ありのまま愛し愛され幸せになります。
そして、元婚約者であった王太子は若くてイケメンなところしか取り柄がなく(というか出番がほとんどない)、政治手腕はサッパリ。
腹黒宰相にしてやられる展開で、これまたザマァです。

また、転生系ではない、貴族社会を舞台にした婚約破棄令嬢ものでも、だいたいは元婚約者よりもずっと良い条件のお相手と新しい関係を作っていくのが王道です。

……『昨今のシンデレラは靴を落とさない。』は、出会い方がぶっ飛んでましたけれど……

『勿論、慰謝料請求いたします!』は、主人公が商魂たくましすぎて、向けられている好意に無頓着な感じですけれど……

それでも、それぞれに新しい恋のお相手が見つかって、幸せを掴んでいく様子が見えてきます。

主人公となる令嬢キャラの性格や新しい恋が始まるまでの経緯は色々ですけれど、たいがいは元婚約者より上位のお相手を見つけて、新しい恋をして、幸せになる展開なわけです。

でも、悪役令嬢・レミリアがもっとも愛している存在は転生者・エミ
取り戻したいのは、悪役令嬢・レミリアの世界全てに匹敵する、唯一無二の存在「エミ」なんです。

まぁ、結果的に、婚約者だった王太子よりも上位と言えるハイスペックなお相手から求婚されるんですけれど……
それすら、エミを取り戻すための手段に使おうとしているなと感じるほど。

というか、そもそもエミからの愛を得た悪役令嬢・レミリアは、原作ゲームのように婚約者への執着心はなく、王太子のことをなんとも思っていないんですよね。
婚約者へ向けられたはずの執着がエミのほうに向いてしまったというか……

「このまま自分がレミリアとして王太子と結婚したら、レミリアたんの好きな人を奪ってしまう」
……と、葛藤していたエミのことを、自分はなんとも思ってないから気にしなくて良いのよ、と言っていたシーンが初期にあるほどなので。

悪役令嬢が真に求めているのは恋ではなく、ただ一つの愛なんですね。

転生者がもう1人いるシチュエーション

『悪役令嬢の中の人』では、悪役令嬢・レミリアに転生したエミのほかに、もう1人転生者が存在します。
それが、ゲーム本編のヒロインである星の乙女・ピナ。

エミは同じ作品を愛する転生者同士、協力できればと思うのですが……ピナに転生した人物は「この世界は自分がマンセーされるためにある!」というスタンスです。

よって、レミリアとして生きたエミが、悪役令嬢のくせに作中の登場人物と良好な関係を築いているのは許せない。
「原作壊すなんて、アンチじゃん! サイテー! このクズ!」
と、レミリアとして生きるエミを口汚く罵る始末。

もうひとりの転生者が居て、主人公と対立したり立ちはだかったりという展開は、他の作品でもたまにお見かけします。
……が、『悪役令嬢の中の人』の場合は悪意剥き出しで対立するだけでなく、しっかり主人公を陥れてくれます。
これも他ではあまり見ない特徴かなと感じています。

たとえば『悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される』も、悪役令嬢・ティアラローズに転生した主人公のほかに、ゲームのプレーヤーキャラであるアカリも転生者として登場します。
そして、ティアラローズは原作通りの展開を迎えて婚約破棄を言い渡されるのですけれど……
そこに隣国の王太子・アクアスティードが現れ、ティアラローズに求婚! という、すぐに元婚約者よりもハイスペックな相手が現れて救い出されるんですね。

でも『悪役令嬢の中の人』は、原作通りの婚約破棄展開を迎えたとき、レミリアとして生きていたエミを助けてくれる存在はいませんでした。
代わりに……ずっとエミの生き様を見守ってきた、本来の悪役令嬢・レミリアの意識が呼び出されます。

そうして目覚めた悪役令嬢・レミリアは、エミを傷つけ、エミを陥れ、エミを絶望させた者たちへ復讐する。
悪役令嬢・レミリアが、再びこの世界にエミを取り戻すためて動き始める。
それが、この話のプロローグです。

『残り一日で破滅フラグ全部へし折ります』も、悪役令嬢とゲームのプレーヤーキャラが転生者というシチュエーションでした。
こちらの作品の場合、悪役令嬢・アレクサンドラが、断罪されるまでの24時間で状況をひっくり返すRTAが描かれます。
一応、新しい恋の相手も登場するのですが、彼が全面的に支えて、助けてくれる展開ではありません。

これはこれで、『24 -TWENTY FOUR-』みたいなスリリングさが面白い作品です!

また、悪役令嬢自身が行動する点は共通していますが、『残り一日で破滅フラグ全部へし折ります』は、婚約破棄を言い渡される前に悪役令嬢側から婚約破棄を申し出ます。
転生者のために本来の悪役令嬢が復讐する『悪役令嬢の中の人』のとは違う展開です。

悪役令嬢は悪役令嬢のまま、自らの手で復讐を果たしていく

悪役令嬢・レミリアに転生したエミの行動原理は
「推しのレミリアを幸せにする! 他にも不幸な運命を辿る人がいるなら助ける!」
という、推しへの愛と善意の固まりでした。

そんなエミが陥れられて絶望し、意識を失ったときに目覚めた本来の悪役令嬢・レミリアは、悪役令嬢としての苛烈さや狡猾さはそのままに、自らの手で復讐を果たすべく行動します。

でも、復讐するといっても、原作ゲームの悪役令嬢・レミリアのように、世界を滅ぼす方向には進みません。
だって、レミリアとして生きていたエミはそんなことを望まなかったから。

レミリアの幸せを心から願っていたエミ。
エミの願いを叶えるには、レミリア自身が幸せでなくてはならない。
そして、エミが持ち前の性格で築き上げたレミリアの名誉も回復させたい。

だから、悪役令嬢・レミリアは、基本的にエミがやってきたような善行を積み上げていきます。
……その裏には苛烈で狡猾な悪役令嬢としての思惑があるのですけれど……

悪役令嬢・レミリアによる僻地追放後の主な行動
  • 虐げられている者たちを領地に受け入れて手厚く保護する
  • 受け入れた領民たちの協力を得て、領地のインフラを整え、農作物の収穫量を増大させる
  • エミの生前の記憶から得た情報を元に、各地で起こる災い芽を摘む(ゲーム本編を攻略)
  • 災いの根源を打ち倒し、ドワーフや魔族、魔王をも味方に付ける(魔王のハートもゲット!)
  • 魔族と協力して魅力的な商品を人間界に流通させ、文化や産業を発展させる
  • 星の乙女登場により不利益を被った貴族を味方に付ける

エミがやってきたこと・やりそうなことを模倣しつつ、そこに悪役令嬢・レミリアの手腕をプラスして名誉回復と同時に、とことん自分が有利になる状況を作り上げます。

でも、やってることがどう見ても聖女なんよ。
表向きは、世界を救う乙女の行動にしか見えんのよ!
てか、悪役令嬢・レミリアが世界を救う行動を積み上げていくから、星の乙女・ピナが存在する意味がなくなるんよ!w
世界の災いから人々を救うのが星の乙女なのに、そもそもの災いが起こらないんだもんwww

でも、それは悪役令嬢・レミリアにとって、復讐の舞台を整える過程に過ぎません。
そもそも、復讐対象の命を奪っておしまいなんて、そんな生優しいやり方では悪役令嬢の復讐心は満たされませんから!
生きたまま地獄に落として、後悔や屈辱まみれの余生を生きてもらいたいと考え、実行しています。

コミカライズの作画が、話の見せ方が素晴らしい!

元々の小説作品が面白いからこそ、魅力的なマンガになっているんですが、コミカライズに際しては作画も大きな魅力だと思います。

エミのレミリアと悪役令嬢・レミリアの描き分けとかね……外見上は同じ人物なんだけれど、中の人の違いをしっかり感じられます。

エミのレミリアだった頃は、温かで心優しい、完璧な令嬢って感じの美少女なんですけど……
本来のレミリアが戻った悪役令嬢・レミリアは、狡猾で苛烈な悪役令嬢って感じの凄みがある美しさ……
そしてたまに「エミのレミリア」を再現しようと、優しく微笑んでみる悪役令嬢・レミリアの表情。

星の乙女・ピナも元々の可愛らしい感じの表情から、転生者の性根の悪さがにじみ出た悪辣な表情、レミリアを陥れてせせら笑う醜い笑顔、ぶりっ子しまくりな仕草など……顔芸とも言われるほど表情の違いを見せてくれます。

そして、マンガとしての見せ方も大変素晴らしく、話の組み立てや展開の緩急バランス、シーンに合せたタッチの使い分けもセンス良いなーと。
繰り返しページを見返し、隅々まで観察してしまいます。

『悪役令嬢の中の人』はどこで読めるのか?

そんな推したいマンガ『悪役令嬢の中の人』は現在、pixivコミックにて連載中です。
その他、マンガ配信サイトでも読むことができ、単行本は現在5巻まで刊行。
原作小説は小説家になろうにて完結(外伝の更新はある様子)し、書籍化されています。

コミカライズ版の連載は佳境に入っており、しっかりと準備を整えた悪役令嬢・レミリアは、贅沢三昧の勘違い星の乙女・ピナを追い詰めていきます!
追い詰められたピナの表情……顔面崩壊してないか? 大丈夫か?w

次の更新はまだか、まだかと待ち遠しくなりつつ……
公開されている分を見返すと、キャラクターの細かな表情やら、背景にいる人たちの姿やらにいろんな気付きがあって、噛みしめるほど味わいが出てくる面白さ。

あと何話でコミカライズ版の連載が終了なのか……終わりが見えてきていて寂しくもありますが、早く結末が見たくなる作品です。

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