【ネタバレ感想】琥珀の夢で酔いましょう1巻
クラフトビールを通じて出会い、共に楽しみ、それぞれが抱える問題や生きづらさに向き合っていく。
『琥珀の夢で酔いましょう』は、そんなクラフトビールをテーマにした大人の青春物語って感じの群像劇です。
1巻は、メインの登場人物となる剣崎七菜・野波隆一・芦刈鉄雄の3人が白熊という店で出会い、仲間として交流していく様子が描かれていきます。(1巻は七菜が中心のエピソードが多め? そして3人の中では七菜がメイン主人公っぽいかな?)
あと、女1・男2の組み合わせだと、三角関係になったりとか? みたいな展開を期待する人も多いのかも知れませんが……今のところ、そういった雰囲気がないのも、この作品の特徴。
むしろ、安直なラブコメではなくて、それぞれが持ってる大人としての悩みだったり、好きなものへのこだわりだったり、適度な距離感で楽しく交流する様子が面白いと思える作品です。
第1話 Fly Me to the Amber Dream
旅行CMの作成案件で自分の案が採用され、仕事の手応えを感じる剣崎七菜。
しかし彼女は広告デザイン会社勤務とはいえ、派遣という身の上から、職場での人間関係が思わしくありません……
陰口を耳にして苛立つ気持ちを慰めるべく、美味しいものを食べようと夜の街へと繰り出しますが、金曜の夜はどこも満席。
そんなとき、偶然見つけた創作料理「白熊」の看板に誘われ、野波隆一の店に入ります。
ほんわかしたイケメン店主に好印象を抱いたのも束の間、お店の中はなんだか片付いていないし、あれこれ矢継ぎ早に話しかけてくる様子にうんざり。
カウンターの先客・芦刈鉄雄はなんだか人相が悪く、隙間風も寒いうえ、ビールしかないと来てガックリ……
店選びを失敗したかと感じる七菜でしたが、すすめられるまま、おばんざいとクラフトビールを口にし心解されます!
そして、料理の腕は良いものの、いまひとつお店が上手くいっていないという隆一から、お店のアドバイザーになって欲しいと頼まれ……居合わせた3人の交流がスタート。
こんな感じで七菜・隆一・鉄雄の3人が白熊という場で繋がり、互いの得意分野を活かして協力する関係が生まれるお話です!
一意専心(京都醸造/京都)ベルジャンIPA
ビールはいまひとつ……と思っていた七菜が、隆一にすすめられるまま白熊で飲んだクラフトビール。
スパイシーさを感じるものの、スッキリと飲みやすい柑橘系アロマ。
作中では聖護院大根の田楽とペアリングし、田楽の味との相乗効果で、新たな味が引き出されていました。
第2話 すばらしくてTAP CHOICE
「白熊をなんとかする会」として、作戦会議する3人。
プロのフォトグラファーである鉄雄が撮った、お店や料理の写真を見て心躍らせる隆一ですが、七菜は広告デザイナーの視点からそれだけでは甘いと忠告。
クラフトビール専門店へと舵を切り、他の飲食店との差別化を図るべきと提案し、七菜は持参したクラフトビールとともにプレゼンを開始します!
このあたりから七菜の企画力というか、バイタリティは余すところなく発揮され、白熊を引っ張っていく感じが出てますね。
ビールはいまひとつ……だった七菜は、すっかりクラフトビールの面白さにハマった様子。
偏見を捨てて、さまざまな料理とクラフトビールの組み合わせを味わう中で、隆一もクラフトビール専門店への舵切りに乗り出すのでした。
初対面はイマイチな雰囲気だったものの、クラフトビールを通じた仲間というか協力関係のようなものができてきたようで、楽しい交流が伺える展開になっていきます!
水曜日のネコ(ヤッホーブルーイング/長野)ベルジャンホワイトエール
可愛らしい缶のクラフトビール。フルーツ系の風味で苦みは控えめ。七菜にすすめられて口にした隆一は、このビールに合わせるならと鯛のカルパッチョを提案。鯛の甘味とビールの酸味がマリアージュする。
インドの青鬼(ヤッホーブルーイング/長野)IPA
パンチのある苦みが特徴だけど、後味はスッキリ。このビールに合わせるならと出てきた料理は、鴨肉ステーキのわさび醤油添えと、カマンベールの天ぷら。味の強い鴨の赤身肉にも負けない、力強い味との組み合わせ。カマンベールチーズと合わせるとまろやかさとの対比も美味しい。
箕面スタウト(箕面ビール/大阪)
珈琲のような深みと苦みのある味わい。スイーツと合わせるのもおすすめ。
ベルビュークリーク(ベルビュー/ベルギー)ランビック
自然発酵のサクランボ入りビール。酸味が強く、苦いビールが不得意な人にすすめやすい味わい。
第3話 パラダイス麦酒
仕事で苛立っていた七菜は、クラフトビールとの出会いによって、自分の好きなものを楽しむ大切さに気付き生活も充実……と思いきや、やっぱり職場では微妙なようで。
親しげに「ナナケン」と呼んでくる上司・早乙女部長にも辟易している様子です。
クラフトビール専門店にしたことで、白熊も少しお客さんが付いてきたので、市場調査にと地ビール祭りへ3人は繰り出します。
このクラフトビールイベント、実際に開催されてたイベントがモデルなんですよね……
コロナ禍とかもあって最近はやってないみたいだけど……また開催されないかな?
しかし、地ビール祭りの会場は人の多く、はぐれてしまう3人。
でもまぁ、そこは大人なので、それぞれ好きに楽しむ展開となり、のちに合流して各自が調達してきたビールを飲み比べます。
べったり一緒に行動するでなく、適度に距離を保ちながら接してる風な3人が楽しそうですね。
協力はするけど依存はしない、そんな関係性が見えてきます。
秋マロン(小西酒造/兵庫)フルーツエール
鉄雄が最初に地ビール祭りで飲んだクラフトビール。お菓子のような甘やかな香りながらも、栗の甘味や渋みも感じられ、じっくり味わう系の味。
貴醸GOLD(壽酒造/大阪)ゴールデンエール
日本酒酵母を使っている点に惹かれ、鉄雄が購入したビール。口当たりは優しく、香りと味が一気に広がります。
柚子無碍(西陣麦酒/京都)IPA
名前の面白さから、隆一が購入したクラフトビール。苦み強めでIPAらしい味だそう。
ゆずポーター(京都・一乗寺ブリュワリー/京都)ポーター/フルーツビール
柚子無碍に続き柚子を使ったビール、しかも黒ビールという面白さから隆一が購入。黒ビールだけどしつこくない、スッキリとやや甘めの味が柚子の風味とも合うそうです。
酸周年(京都醸造/京都)サワーIPA
お世話になってる京都醸造もめざとく見つけて、3周年にかけた記念ビールも隆一は購入。キリッとしたバランスの良い味わい。
伊賀流忍者麦酒(火の谷ビール/三重)フリースタイルダークラガー
温泉に入ってる?忍者?という話に惹かれて、七菜が購入。意外とスッキリして飲みやすい。
第4話 鴨川は淡いブルース
祇園祭シーズンに突入した京都は、暑さも人出もマシマシ。
そんな中、観光系の撮影の仕事はキツいなと心の中でボヤく鉄雄は、有休を使って推しを満喫する七菜と遭遇します。
七菜の推しは女優のMAKOTO。
彼女がモデルを務めた広告パネルを写真に収めるべく、平日に休みを取って熱い中街に出てきた七菜でした。
改装中の白熊へ2人して押しかけひと休み。
水分とクラフトビールを補給したのち、日の暮れてきた京都の町を3人で散歩し、持ってきたビールを河原で楽しみます。
夜になっても京都の夏は蒸し暑いんですよね。
でも、そんな中でも川に入ってみたり、ビールを飲んだり、さながら夜のピクニック?
ビッグウェーブ・ゴールデンエール(コナブリューイング/ハワイ)
花の香りが強いけれど、クリアな味が爽快。夏っぽい雰囲気も。
第5話 A Hollow New World
祇園祭の宵山を迎え、いつものように白熊へ赴く七菜でしたが、看板には臨時休業の文字。
同じく、いつものようにやってきた鉄雄とともに、店中を伺うと、満面の笑みで出迎える隆一の姿が!
何事かと思ったら、雑誌の企画で女優・MAKOTOが来るんだそう!
推しが白熊にやってくると聞いてテンションMAXの七菜は、お店にほかのお客さんもいた方がいいだろうからと居座ることに。
ついでに、緊張でカチコチな隆一へカンペを出すアシストもやっちゃいます!
雑誌企画ではMAKOTOのほかに、料理評論家のグリフ・ハーヴェイもやってきますが、「しゃべりすぎる評論家」の触れ込みはどこへやら、グリフはぎこちない様子。
しかし、スイッチの入ったグリフは一転、本質を突いた容赦ない言葉で料理と隆一を批判し始める展開に!
このまま取材は終わるかと思いきや、少しだけ時間をくれと願い出て、隆一は改めて料理を振る舞います。
そして、鉄雄とMAKOTOの意外な接点も判明しました。
1巻ラストの話では、白熊と隆一が抱える問題の本質を考えさせられる展開。
そして、七菜が推しとファーストコンタクト(?)を果たすという記念すべき回でもありました。
デストロイエンジェルIPA(京都・一乗寺ブリュワリー/京都)イングリッシュIPA
言われっぱなしではと、一念発起した隆一が作り直した料理とともに提供したクラフトビール。
コクのある味わいのなかに、落ち着ける優しい味出、用意されたクリームソースや土佐醤油を使った料理ともマッチ。
琥珀の夢で酔いましょう1巻全体の感想
1巻はメインの3人が出会い、クラフトビールを通じた交流と協力関係ができていく様子を中心に描かれています。
そして最後には鋭い指摘があり、思わぬ出会いがありと、これからの展開を期待させる感じで終わります。
クラフトビールもいろいろな種類が登場していますし、飲んでみたくなりますね!
最近はスーパーやコンビニでも缶のクラフトビールが買えるようになってきましたし、クラフトビールを扱うお店も増えてるように感じます。
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